生活レベルを落としたのに、なぜ私は不幸にならなかったのか。
行動経済学の始祖である、ダニエル・カーネマンは
損失と利得の感覚は、参照点に比して行われる、しかも損失の方がより強く感じられる、と言いました*1ファスト&スロープロスペクト理論の要は、参照点が存在すること、損失は同等の利得より強く感じられることである。現実の市場を数年にわたって観察した結果、これらのコンセプトが正しいことが確かめられた
ところで、「参照点」つまり、比較対象が、「浪費していた生活」であれば、私はかなり不幸になっていてもおかしくないはずです。でも、実際は、そうでなかった。
比較対象は「浪費していた生活」ではありませんでした。おそらく、比較対象は「手元にお金がない状態」「支払いを遅延してしまうかもしれない恐怖」でした。
それに比べると、家計簿上に積み上がる貯金は、私を著しく幸せにしました。
それこそまさに「余裕」と呼べるものだったと思います。ですので、「やりだすと、貯蓄にハマる人がいる」のは、とても理解できます。
Source: 支出を抑えて生活レベルを落としても、生活の満足度が全く下がらなかったときの話 | mattoco Life
得するより損することのほうが強く感じるようにできている。比較対象は、「倹約生活をしている私」 vs 「浪費生活」をしている私ではなく、「貯金がなく、クレカ支払いが遅延してしまうかもしれない酷い状態にいる自分」。自分も20代前半は全く貯金がなく焦って恐怖に駆り立てられていた日々を過ごしていたため、この恐怖はよくわかります。
この、「貯金がなく、クレカ支払いが遅延してしまうかもしれない酷い状態にいる自分」に比べたら倹約生活をして貯金が積み上がってく通帳 or 投資信託の評価額を見ている方がはるかに幸せだと思います。
それよりも、「支払い」「現金がない」というマイナスのストレスのほうが遥かに強力であり、貯蓄による心の余裕がそのマイナスを減らせば、強い幸福を感じることができるのです。