親は焦るあまり、のんびりする子につい「早くしなさい」と言ってしまいがち。だがその行為が将来子どもに様々な問題を起こす可能性がある。幼児期から小学校低学年までの時期に大切な「3つの育み」を阻害する恐れもある。
自ら取り組める子に育つためには、幼少期に育むべき3つのことがある。「自己肯定感」と「レジリエンス(折れない心)」、そして「自律性」だ。
親が口頭で指示しても子どもがなかなか取り組まない場合、やることを「見える化」することで、子どもが上手に取り組めるようになるケースがある。
例えば、ホワイトボードに「朝、出かける前にやること」を書いたマグネットシートを貼る。シートの裏には花丸を描き、できたらシートを裏返すと、達成した数が一目で分かる仕組みだ。全部できなくても、できたところを褒める。
注意したいのは、失敗したり、できなかったりしても決して責めないことだ。
低学年までの時期は、できないことは親が手伝いながら一緒に取り組む時間を持ってほしい。そうすれば「できなくても親は助けてくれる、見守ってくれている」という信頼関係を築け、レジリエンスにつながる。うまくできなくても「大丈夫だよ」と励ませば、自己肯定感を高められる。
なかなか習慣化できない子どもだと親は焦ってしまい、イライラしがち。でもそんなときこそ、3つ目の自律性を養う好機だ。
子どもによって習慣化できるようになる時期は異なるため、子どもと一緒に考えながら改善していく必要がある。子ども自身に考えさせ、選択させることが「自律性」につながる。
子どもと大人では、時間の流れの感じ方や時間管理能力が違うことも理解してほしい。保育園児や小学校低学年の子どものうち、先生の指示ですぐ動ける子はごく一部だ。小学校低学年くらいまでの時期は、自分をコントロールする力が育っていないことが多い。
「3つの育み」が不十分だとどうなるのか。
親の指示待ちで成長すると、人生の選択を自分でできず、何でも他人のせいにする大人になってしまう。自律性が十分に育っていない事例の典型だ。幼少期に、失敗するたびに親が子どもを責めてばかりいると、自分や親、周囲の人までも信じられなくなり、引きこもりになることもある。これは自己肯定感とレジリエンスがうまく育たぬまま大きくなったためだろう。
親が子どもを手伝うつもりで「先回り」をしていないかは、気をつけてほしい。「先回り」は親の不安解消や子どもを支配したい気持ちがベースになっている。これでは子どもの自律性が育たない。
また、「3つの育み」を促すのに、親が子どもに「簡単な家事分担(お手伝い)」をお願いするのは効果的だ。やりたがらない子どもには、無理をせず、機嫌がよいときに、その都度声をかけるとよい。
そのときに大事なのは、「ありがとう、助かったよ」などと感謝の気持ちを言葉で伝えること。人のために何かをして喜ばれたという体験は、社会参加の意識を育むことにつながる。
一方向的なコミュニケーションに終始せず、双方向のやり取りを意識してほしい。例えばお手伝いをしてほしい家事について、関連する図鑑などを一緒に見ながらやり方を親子で楽しく学ぶのも一法だ。
親子でちょっとしたポイントを押さえて過ごせば、きっと本人は納得して、自分に合う人生を見つけていけるはずだ。