90s生まれミレニアル世代のメモ帳/備忘録

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消えた日経ビジネスオンラインの記事: 10歳までに英語を勉強していないとハーバード大学合格は無理なの?

10歳までに英語を勉強していないとハーバード大学合格は無理なの?
日経ビジネスonline 2011年8月1日付

福原 正大

元URL: https://business.nikkei.com/article/skillup/20110727/221705/

 以前10歳までに英語の勉強を始めることが、ハーバード大学の合格を目指す
上で大きなアドバンテージになるとお話ししました。脳が言語感受性期にある
ため、自然に英語を学ぶことができるからです。

10歳までに英語を学んだ子供たちは、中学校(2011年度から小学校5年生に
なりました)に入って英語の授業が始まると、同じ不満を家で洩らします。

「中学校の先生の英語、カタカナ読みなんだよね」

一方、中学校まで英語を学んでいない子供は、このような不満を持つことが
ありません。

中学校に入った時点でこうした不満を持つレベルになっていないと、高い次元
の英語の総合力(スピーキング、リスニング、リーディング、ライティング)
が必要とされるハーバード大学合格は無理なのでしょうか?

結論から言えば、心配はありません。その後の勉強方法次第でハーバード大学
合格するレベルの英語力を養うことはできます。確かに、11歳になると脳が言語
の感受性期を終えるため、英語の音を聞き自然に意味を理解することは難しく
なります。一方で、11歳になると論理性が身についてくるので、これをうまく
利用して英語を勉強していくことができるようになります。具体的に見ていき
ましょう。

発音記号と共に単語を覚える

まず「単語力」を徹底してつけさせるべきです。英語を聞き取れない、話せない
最大の理由は、単語を知らないことです。単語の意味が分からなければ、相手が
言っていることの意味は分かりません。文章を読むことも話すこともできません。

海外に行くと、文法はめちゃくちゃだけれども、英語が通じる人がいます。
こういった人は、知っている単語を並べているのです。「ご飯をいただけますで
しょうか?」と言わなくても、「米、米!」とお腹を空かせた顔で言えば、ご飯
を食べたいことは伝わります。

幅広いジャンルの単語を覚えるためには、例えば「4000 Essential English
Words」Paul Nation(著)Compass Publishingのシリーズが有効です。
このシリーズ(1~6)は、欧米人が最も頻繁に使う4000語を掲載しています。
毎週2章ずつ覚えていけば、欧米人が頻繁に使う単語の90%を約2年でカバー
できます。単語を覚える工夫が施されていて、絵と音、そして発音記号、例文
から単語を覚えることができます。お子さまがとっつきにくいようであれば、
親御さんが一緒について見てあげるといいでしょう。

単語を覚える際、意味と共に、正しい発音を学びましょう。発音できない単語は、
聞き取ることができません。ただ単に記憶しているだけの単語は聞き取れないの
です。

まず、すべての発音記号を正しく発音できるようにしましょう。「Better
English Pronunciation」 J. D. O'Connor (著) (Cambridge English
Language Learning)  は各発音記号の発音方法を、絵と共に説明しています。
どの筋肉をどのように使うかまで書いています。発音記号が正しく発音できれば、
単語も正しく発音できます。

単語を覚える時に、発音記号を見て発音する習慣をつけましょう。先述の4000
Essential English Wordsは、発音記号を掲載しているうえ、音声ファイル
をダウンロードして実際の発音を聞くこともできるので便利です。

日本の英語教育の問題点の一つは、子供たちが発音記号を覚え、それ通りに発音
するトレーニングを十分にしないことです。また、日本語を話す時に使う口や舌の
筋肉と、英語を話す時のそれは異なります。英語を話すために口と舌の筋肉を鍛え
る必要があります。口の筋肉を鍛え、発音記号を一通り正しく発音できるように
なっていれば、すべての単語を綺麗に発音することができます。

NHKの英語プログラムの監修をされている関西外国語大学の中嶋洋一先生は公立
中学校の教師時代、教え子が綺麗な英語を話せるようになったことで有名です。
その成果は「中嶋マジック」と呼ばれていました。その基本は、発音記号を正しく
発音できるように指導すること。そして、単語を覚える際に、発音も完ぺきに覚え
るよう指導していたのです。

このように論理的に発音を学んだ人が驚くのは、発音が正しくできるようになると、
これまで聞き取れなかった英単語が聞き取れるようになってくることです。
そして、綺麗な発音ができるようになれば、英語で話すのが楽しくなってくるので、
スピーキング力が伸びていきます。

英語で新しい知識を学ぶ

「英語を将来使わない」と思っている人が、英語を学んでも身につきません。
しかし「英語を学ぶと自らの世界が広がる」と理解すれば、英語への取り組みが
変わります。今の日本の英語教育は、「英語そのものを教える」という形。これでは
英語は身につきません。しかし、あなたが「英語を使って世界を広げる」という姿勢
で子供に英語を学ばせる環境をつくれば、子供はやる気を示し、英語言語力は高まり
ます。英語を通じて学ぶ好きな世界も広がるのです。第二言語教育の権威、カリフォ
ルニア大学サンディエゴ校の當作靖彦教授は、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で
情報学、世界の歴史、サイエンスなどを学ぶ」ことの重要性を訴えています。

 洋楽を好きになり、その音楽やアーティストのことを知りたいがために英語を
学んで、英語ができるようになった方が多くいます。こうした英語の学びは、英語力
の取得を目的にしているのではなく、自分が興味を持っている世界を知りたいために、
英語をその道具として利用しているのです。

お子さまが興味を持っている世界を、英語で広げてあげることが、英語を学ぶ上
でも有効なのです。「これはペンです」といったつまらない内容では、お子さまは
飽きてしまいます。個々の子供の興味をてこに英語を学習させることが有効で
しょう。こうした体験を通じて、お子さまは自分の好きな分野を見つけて、「それ
を学ぶためにはハーバード大学進学が必要だ」と考えるようになるのです。

学校の授業も大切

これまで日本の中学英語の足りない部分ばかりを話してきました。しかし、現在
の日本の英語教育は全く役に立たないというわけではありません。文法をしっかり
と身につけ、格調高い文章に触れるには有効です。英語でコミュニケーションを
取り、世界で活躍するためには、正しい文法で、格調高い英語を使う必要があり
ます。中学校での英語をおろそかにしてはいけません。学校の授業を通じて正し
い文法と、高い読解力を身につけましょう。ただ、あまり和訳をしないようにして
ください。英語を英語として理解することが大切です。

ここまでの話をまとめましょう。11歳からでも、世界で活躍するための英語の基礎
を作ることは可能です。発音記号を駆使して正しい発音と共に英単語を覚え、英語
で新しい知識を吸収し、学校で正しい文法と格調高い文章に触れるようにしましょう。

中学生になったら考える力を伸ばす

ここで少し英語から離れた話をします。将来お子様がハーバード大学東京大学
ダブル合格を目指すようになった時、英語でコミュニケーションする力があれば、
十分な力を身につけられていると言えるでしょうか?

もちろん英語だけでは不十分です。中学受験を終えて私立学校に進学する、または
公立中学校にお子さまが入ったら、英語以外の力をつける体制を徐々に整えていき
ましょう。

初めに行うべきは、一生モノの「考える力」をつけさせることです。大学受験に
留まらない大切な能力です。例えばニューヨークのドルトンスクールでは、小学校
4年生くらいから哲学やクリティカルシンキングを徹底して教えています。最新の
映画「ちいさな哲学者たち」が紹介していたように、フランスでは幼稚園から哲学
を教える取り組みを実行しています。

「考える力」を子供につけさせるために、具体的にはどうすればいいでしょう。

まず、世界の古典(哲学書を含む)を、日本語でいいので、数多くアクティブに
読ませることをお勧めします。中学生ならば、プラトンの「ソクラテスの弁明」
孔子の「論語」、福沢諭吉の「学問のすゝめ」などは、問題なく読めるはずです。
アクティブとは、最近はやりの速読ではなく、じっくり読むことです。その際、
1) 主人公になりきる、2)自分が作者になったつもりで物語の次の展開を考えて
いく、ことが重要です。

最初は、慣れていない文体をとっつきにくいと思うでしょう。その場合は、親御
さんが一緒に読み進めてあげてもいいかもしれません。親御さんが参考書を読み、
原典に当たっているお子様をサポートするのは有効です。原典を読み解いていく
ことで、長期的に有効な高い論理力、人生に対する深い考え方といった哲学的思考
が身につきます。これが、世界で活躍するための基礎を作っていくでしょう。

哲学教育で有名なアスペン研究所の日本法人「日本アスペン研究所」は、高校生に
論語を学ばせています。高校生に、前述の「論語」をはじめとする哲学書に当たらせ、
学生間で議論させるのです。大切なのは、哲学書の作者である哲学者と対話をする
という発想。この対話を経験すると、人生や自分自身について思索するようになり、
論理力や思考力が高まるのです。こうした「考える力」は、海外の大学に入学する
のに不可欠です。

グローバルに活躍している人と会う機会を作る

世界で活躍している人と会う機会を作ってあげることも有効です。たとえ、あなた
に国内経験しかなくても、お子さまは、あなたの世界観に留まることなく、海外で
の活躍を意識するようになります。

ハーバード大学に進学した日本人の多くが、高校生までに同大の卒業生に会って
います。この体験が、ハーバード大学を身近に感じさせます。

世界で活躍している人と会い、世界の情勢に触れ、世界に対する興味を覚えれば、
お子さまは世界観をさらに広げるために自身で英語の勉強を進めていくでしょう。