米国の人口は日本の約2.5倍ですが、それを考慮しても500万戸以上という数字は巨大であり、活発な取引がうかがえます。日本の半分程度の人口に過ぎない英国やフランスも取引戸数は50~70万戸台で、わが国の市場規模が欧米に対していかに小さいかがわかります。
こうした数字の背景には、住宅ストックに対する評価の違いがあるようです。日米の住宅投資額累計と住宅資産額を比較したデータをみると、米国は過去の新築投資額の合計と住宅全体の資産額がほぼ釣り合っているのに対し、日本の住宅資産額は投資額を大きく下回ります。つまり、わが国では既存住宅に対する市場の評価が低く、根強い新築志向が既存住宅の取引を抑える結果を生んでいると言えます。
Source: 既存住宅市場の現状-(1) その市場規模:データトピックス【不動産ジャパン】
やはり、各書籍やメディアが書いている通り新築が圧倒的に多い。既存住宅に対する市場の評価が低い。これって中古なら激安で買えるということでしょうか。
最近では、こうした状況を打開するために、ビッグデータやAI(人工知能)などのテクノロジーを使って個々の不動産の評価をしようとする試みが行われている。不動産+テクノロジーの造語で「不動産テック」と呼ばれ、注目を浴びている。
具体的には、過去の取引データや将来予測、周辺環境など、さまざまな角度から個々の不動産を分析し、マーケットにおける合理的な価値を算出するものだ。
とりわけ、設備仕様や間取り、面積などが似通った部屋が、同じ建物内に多く存在するマンションのようなマーケットでは、それらをデータ化し、査定価格をはじき出すことが比較的容易にできる。
テクノロジーを活用して、「手間暇かけずに早くさばこう」という仲介業者の思惑を排除することで、フェアな観点から物件を診断し、マーケットでの取引価格をリアルタイムに算出できれば、売る側も買う側も安心して取引に臨めるようになるだろう。
こうした試みは、ソニー不動産やヤフー不動産といった、不動産売買仲介を極力ネット上で行う「ダイレクト・マッチング」サービスですでに一部導入されている。さらに、最近は一歩進んで、「売る前」あるいは「買う前」に個々の物件価格をあらかじめデータとして「見える化」しようという動きが生まれてきている。
株式や債券、金地金(いわゆる金の延べ棒)などは毎日相場が立っているので、その日の価格をネットなどで容易にチェックすることが可能だが、中古マンションについてもそれを実現しようというわけだ。
こうしたマンションの「価格ボード」のようなものがあれば、マンションの所有者は売るタイミングを逃すことなく、また不動産屋の恣意的な価格付けに惑わされることもなく、売却の準備をすることができるし、買う側も不当に高い価格で中古マンションを買わされずに済むようになる。
Source: 「日本人は新築好きだから中古市場が広がらない」はフェイクだった(牧野 知弘) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)